イライラのぶつけ先

 「うつ」になってから、わりとささいなことでイライラ感を覚えるようになったように思う。子どもたちに対しては、それがより顕著だ。
 昨夜のこと。
 寝る前の歯磨き、と子どもに声をかけて歯ブラシを渡した。ちなみに子どもは4歳と6歳の保育園児。ふざけ遊ぶのが仕事のような年頃だ。例によって、一方は歯ブラシをくわえたままお絵かきに夢中、もう一方は歯ブラシを手に持ったまま人形遊びに夢中。「歯磨きの時間でしょ!」と何度か声をかけ、しばらくして「もう知らないからねー」と先に2階の寝室に上がって見せる。すると二人はあわてて2階へと追いかけてきた。「今何の時間なの!」「…はみがきぃ…」「じゃあ何しないといけないの!」「…ちゃんとみがくぅ…」ここまではよくある風景。
 上の子が少しすねて、いい加減な歯磨きをして見せた。それに対してイライラ感を強くし、歯ブラシを取り上げて、投げ捨てた。歯ブラシは壁に跳ね返り、階段を転がっていった。子どもは「なんで投げるのー!」と泣きながら訴える。「もうやだぁ!」と叩いてきた。その手をつかまえ、叩き返す。「えい!えい!」泣きながら、必死に反抗してくる。こちらは衝動を抑えられずに「いい加減にしろ!」と頬を叩く。
 子どもはしばらく伏せて泣いていた。しばらくして、泣きながら投げ捨てられた歯ブラシを取りにいき、僕の目の前に座って歯磨きをし始めた。こちらはまだおさまらず、「最初からそうすればいいんだろ!」と怒鳴りながら仕上げ磨きをする。
 子どもは寝る時間になってからも、しばらくひっく、ひっくと泣きじゃくっていた。そのあたりでようやくこちらも落ち着いてきて、自分のしたことを客観視することができた。「なんで歯磨きごときでここまでなってしまうんだ?」と自問しながら、いまだひっくひっくと寝付けない彼に、「ほら、早く寝ないと明日の朝のウルトラマンが見れないよ」なんて声をかけていた。
 今日も、だ。
 お昼用の明太子スパゲティのレトルトを持って二人が遊んでいた。「食べ物でなにやってる!」とレトルトを取り上げる。そこでもうだめだった。イライラ感がとまらない。「今日はお昼なし!」と冷たく言い放つ。二人そろって「パパごめんねぇ」と言いにきたが「知らない、お昼はないから」と突き放す。おちゃらけて機嫌を取ろうと思ったのだろう、二人が保育園用の上履きで軽く叩いてきた。次の瞬間、その上履きを取り上げ、5回ずつ叩き返していた。当然子どもは泣いた。「ふざけるな!」と怒鳴り、そっぽを向いて無視を決めこむ。20分位して再び子どもたちは「ごめんねぇ」とあやまってきた。そこでようやく我にかえった。

 いったい何をしてるのだろう。

 なんでこんなにイライラするのだろう。

 安定剤を規定量以上飲みたくなる衝動にかられるが、なんとか思いとどまった。そして自己嫌悪が襲ってくる。昼寝している子どもたちの顔を見ながら、吐き気がするくらいに自分のことが嫌になる。こんな自分はこの家にはいないほうがいいんじゃないか、とすら思ってしまう。一方で、それも今の自分だ、自分のことを理解してなんとかコントロールしないと、なんて思っていたりもする。

 今日はこの後、つれあいが仕事から帰ってきたら大和の沖縄物産店「わしたショップ」に併設されている沖縄料理屋に行って沖縄そばを食べ、その足でスーパー銭湯へと出かける予定。